KOTOMIN 「TSUKI NO JIGOKU」

満月が昇る夜の街、階段の下には赤い鬼が立ち、上には「地獄」と書かれたうちわを持つ女性の姿。黒と白を基調に、赤と黄色の差し色が鋭く画面を貫きます。シンプルな線で構成されながらも、階段の奥行きや街のざわめきが巧みに表現され、まるで一場面の物語を切り取ったよう。人々が行き交う都市の風景の中に、異形の存在が静かに溶け込み、日常と非日常の境界を曖昧にしています。強い構図と抑えた色彩が、現代社会の中に潜む「もう一つの現実」を想起させる作品です。

この作品を飾ると、空間に知的でアート性の高い緊張感が生まれます。モノトーンの中に浮かぶ赤と黄のアクセントが印象的で、インテリアに現代的な力強さを与えます。都会的でありながら、どこか人間の内面に潜む不安や希望を感じさせる構成は、見る人に深い余韻を残します。静けさとドラマが同居する画面は、飾る場所によって印象を変え、空間の主役にも静かな背景にもなれる柔軟さを持っています。心を刺激するインテリアアートとして、強く記憶に残る一枚です。