ホラグチカヨ 「コンタクトレンズのボートに乗って」

星が瞬く夜の海を、コンタクトレンズ型の透明なボートが静かに進んでいきます。舵を取るのは優しい表情のクマ、その隣には波のような髪をなびかせる人物が寄り添い、空には月の上で見守る仲間たちの姿。深いブルーに溶け込むような色彩と、柔らかな光の粒が織りなす世界は、まるで夢と現実のあいだを漂っているようです。漂う魚や羽ばたく蝶のようなモチーフが幻想的なリズムを生み、静かな夜の中にも希望の灯がともるような温もりを感じさせます。穏やかでどこか切ない、物語性のある美しい一枚です。

この絵には、静けさの中にあるやさしい勇気が息づいています。暗い夜を照らす月や星のように、目に見えない希望をそっと思い出させてくれるようです。眺めていると、いつの間にか心の波が穏やかに整い、安心感が胸の奥に広がっていきます。夢の続きを見ているような柔らかい感覚が、日常の中に小さな癒しの時間を与えてくれます。静寂の中に優しさがあり、孤独の中にもぬくもりがある――そんな普遍的な優しさを感じさせてくれる作品です。