やぶがみようこ 「カエル船」

「OH, DEAR　SHIP IS READY TO GO DOWN（ああ、たいへん！　船が沈みそうだよ）」というセリフがユーモラスに描かれた作品です。荷物ならぬカエルたちをぎっしりと乗せた小舟が、今にも沈みそうに水面で揺れています。手前のロバは葉っぱの上に立ち、困ったような表情でその様子を見守っており、なんとも微笑ましく、どこかシュールなユーモアを感じさせます。黒い背景の中で、カラフルなカエルたちの色彩が鮮やかに浮かび上がり、緊迫感と楽しさが絶妙に同居した構図になっています。細部の表情や動きが生き生きとしていて、絵本のワンシーンのように物語を感じさせる一枚です。

この作品は、ちょっとしたハプニングの中にも笑いや優しさを見出す力を感じさせます。沈みそうな船という一見ピンチな場面も、どこか楽しげで、仲間と力を合わせて乗り越えていくような前向きさが伝わってきます。ロバの穏やかなまなざしは、焦らず見守る大人の落ち着きのようでもあり、日常の小さな困りごとに「まあ大丈夫」と笑える心の余裕を思い出させてくれます。カラフルなカエルたちは個性豊かな仲間たちの象徴のようで、誰もが少しずつ違っても一緒に進んでいけるという温かなメッセージを秘めています。ユーモアとやさしさを同時に感じられる、見る人をやわらかく励ますような作品です。